最近TikTokを見ていると、片足でぴょんぴょん跳ねながら、拳でドアを「トントン」と叩くような妙なダンスが流れてきませんか?
そこで使われているのが、「Toc Toc!」という妙に耳に残る曲です。
これが今、海外のTikTokを中心に広がっている「Toc Tocダンス」。少し追いかけてみると、単に若者が同じ振り付けを真似しているだけではありません。学生やスポーツ選手が踊り、警察までネタに乗っかり、さらにAIで作られた人物まで同じダンスを踊り始めています。
2026年10月現在、Toc Tocは普通のダンスブームを超えて、かなりカオスなネットミームへと変わりつつあります。
Toc Tocダンスって何?
使われている曲は、フランスの歌手・タレントPatrick Sébastien(パトリック・セバスチャン)の「Toc Toc」です。
面白いのは、TikTok向けに最近作られた新曲ではないこと。発表されたのは2015年で、それが約11年たった2026年になって突然掘り起こされました。
ダンス自体は非常にシンプルで、片足で軽く跳ねながら、曲の「Toc Toc」に合わせて拳でドアをノックするような動きをします。難しい振り付けではなく、数秒見ればだいたい真似できるくらいの簡単さです。
むしろ、この分かりやすさこそがTikTokでは強かったのかもしれません。
2026年9月、突然TikTokでブレイク
海外メディアがこの現象を大きく取り上げ始めたのは、2026年9月後半です。
フランスメディアでは、クリエイターのNooah Prvvが始めた振り付けをきっかけに流行が広がったと報じられています。そこからフランス国内だけでなく、ドイツ、ポーランド、アメリカなどにも波及し、一般の若者だけでなくフィギュアスケート選手や聖職者まで参加するようになりました。
この広がり方を見ると、単なる一つの人気動画というより、「音源と簡単な動きのセット」が国境を越えてコピーされていったと考えた方が分かりやすそうです。
そして10月に入っても関連動画の投稿は続いています。
海外では「Kicékéla」と呼ばれ始める
さらに面白いのが、海外で別の呼び名まで生まれていることです。
曲の中には「Qui c’est qui est là ?」というフランス語があります。意味としては「誰がそこにいるの?」といったところですが、フランス語を知らない海外ユーザーには、その音が「Kicékéla」のように聞こえたようです。
その結果、「Toc Toc」という正式な曲名とは別に、「Kicékéla」という呼び方でも動画が広がり始めました。
曲名ではなく、耳で聞こえた音そのものがネットミームになる。このあたりもTikTokらしい現象です。
フランスの国家憲兵隊までToc Tocに参戦
ここからToc Tocは、普通のダンスブームとは少し違った方向へ進み始めます。
なんとフランス国家憲兵隊の公式TikTokまで、この流行に参加しました。
2026年9月24日の投稿では、家宅捜索などの映像にToc Tocの音源を組み合わせています。「Toc Toc=ドアをノックする」という曲の意味から発想したネタなのでしょう。
実際の警察組織がネットミームに乗ってくるところまで行くと、同じ振り付けを真似するだけのブームではなくなります。曲そのものが、動画を作るための「ネタ素材」として使われ始めているわけです。
そしてAI動画まで混ざってきた
そして個人的に一番面白いと思ったのが、AI動画まで普通に混ざり始めていることです。
Toc Toc関連の動画を見ていると、人間が実際に踊っている動画の間に、明らかにAIで生成された映像が流れてきます。
フランスメディアでは、Emmanuel Macron(エマニュエル・マクロン)大統領がエリゼ宮の中庭でToc Tocダンスをしているように見せたAI動画まで登場したと報じられています。当然ながら、本当に大統領が踊ったわけではありません。
しかしTikTokのタイムラインでは、普通の若者が踊る動画の次にAI人物が現れ、その次には着ぐるみや有名人風のキャラクター、さらに警察の公式動画まで続きます。
一つ一つ立ち止まって見れば違いは分かりますが、次々とスワイプしていると、それらが全部同じ「Toc Toc」という流行の中に混ざって見えてきます。
まあまあカオスです。
これ、かなり「2026年の流行」っぽい
Toc Tocを見ていて興味深いのは、流行そのものよりも、流行の広がり方が以前とは少し変わっている点です。
これまでのTikTokダンスなら、誰かが踊った動画を別の人が真似し、人気が出ると有名人や企業アカウントまで参加する、という流れが中心でした。
ところが今は、その途中にAI動画が自然に入り込んできます。
人間が撮影した映像とAIで生成された映像が、同じ音源、同じハッシュタグ、同じトレンドの中に並んで流れてくる。見る側も毎回「これは本物か、AIか」と確認しているわけではなく、そのまま次の動画へ進んでいきます。
もちろん、Toc TocがAIによって流行したわけではありません。
ただ、流行が始まったあとにAI動画が加わり、それがさらにネタとして再利用される。この広がり方は、数年前のSNSトレンドとは明らかに少し違います。
Patrick Sébastien本人も驚いている
さらに面白いのが、Patrick Sébastien本人の反応です。
2026年9月29日のインタビューで本人は、2015年に出したToc Tocについて、突然誰かが片足で跳ねる振り付けを作り、それがドイツやポーランドなど海外へ広がっていったと説明しています。
つまり、本人が11年前の曲を再び売り出そうとして仕掛けたブームではありません。
昔の曲が突然ネット上で発掘され、知らないうちに世界中の若者が踊り始め、本人が後からその状況を知る。
これも、いかにもTikTokらしい現象です。
なぜToc Tocはここまで広がったのか
Toc Tocが広がった理由を考えてみると、かなりTikTok向きの条件が揃っています。
まず、ダンスがとにかく簡単です。数秒見れば真似でき、「Toc Toc」という音とドアをノックする動きも直感的に一致しています。
そのため、フランス語を理解する必要もありません。
さらに一人でも複数人でもでき、スケートリンクでも学校でも成立します。警察ならドアを叩くネタに変えられますし、AIキャラクターに踊らせても成立します。
つまり、元の動画を忠実にコピーしなくても参加できるのです。
この「音と動作だけ借りれば、自分なりの動画に変えられる」という自由度の高さが、国や言語を超えて広がった理由の一つなのかもしれません。
Toc Tocは日本でも流行る?
では、日本でもToc Tocは流行するのでしょうか。
2026年10月7日現在、日本中が知っているような大ブームにまでなっているとは言えません。
ただし、TikTokで広がるための条件はかなり揃っています。
振り付けは簡単で、音も耳に残り、数秒見ただけで何をしているのか分かります。言葉の意味を知らなくても楽しめますし、一人でも大人数でも参加できます。
さらに、AI動画との相性までいい。
日本の大きなTikTokerやYouTuberが使い始めれば、一気に広がっても不思議ではありません。
逆に、このまま海外中心のミームとして終わる可能性もあります。
だからこそ、今の段階で見ておくのが面白いのだと思います。
Toc Toc、半年後にはどうなっている?
2015年にフランスで発表された曲が、11年後の2026年に突然復活しました。
そこから簡単なダンスが生まれ、海外へ広がり、「Kicékéla」という別名まで誕生。さらに警察の公式アカウントが便乗し、今ではAI動画まで混ざっています。
半年後には、「そんなのあったね」と言われているかもしれません。
逆に、日本でも当たり前のようにToc Tocが流れている可能性もあります。
2026年11月現在は、まさにその途中です。
人間もAIも入り交じりながら、一つの音源を好き勝手に使い始める。このよく分からないカオスまで含めて、Toc Tocはかなり「今のインターネットらしい流行」なのかもしれません。


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