2025年秋、待望のiPhone 17シリーズが発売されました。しかし、その輝かしいデビューに水を差すかのように、SNSや一部メディアを賑わせたのが「スクラッチゲート」問題です。発売直後からX(旧Twitter)にはこんな声が溢れました。
iPhone17 – 展示見本の傷が噂に・・・


Apple Storeの展示品、傷だらけじゃないか…。今年のProモデル、塗装が弱すぎるのでは?

え、もう傷が…?予約したけど、ケースなしで使うのは怖いかも。買うのを少し待つべきか…。
しかし、この騒動の結末は意外なものでした。Appleの公式発表によると、それらは「傷」ではなく、展示用のMagSafeスタンドの金属素材が本体に付着した「素材の転移」であり、布で拭き取れば消えるものだったのです。この発表を受け、ユーザーの反応は安堵と新たな疑問に分かれました。

なんだ、ただの汚れか!焦って損した。でも拭けば消えるなら一安心。

傷じゃなかったのは良かったけど、そもそもそんな跡がつくような展示方法はAppleとしてどうなの?という疑問は残るよね。
この一件は、新型iPhoneが発売されるたびに繰り返されてきた、ある種の「恒例行事」を私たちに思い起こさせます。
それは、製品の欠陥を指摘し、時に過剰に演出される「〜ゲート」と呼ばれる一連の騒動です。この記事では、今回のスクラッチゲートをきっかけに、過去のiPhoneが直面してきた様々な「ゲート問題」を、当時のユーザーの生々しい声と共に振り返り、その真相に迫ります。
記憶に残る歴代iPhoneの「ゲート問題」たち
「ゲート」という言葉は、ウォーターゲート事件に由来し、大きなスキャンダルや論争を意味する接尾辞として使われます。iPhoneの歴史は、まさにこの「ゲート」の歴史でもありました。
その歴史を振り返ってみましょう。
アンテナゲート(iPhone 4 / 2010年)

すべての始まりとも言えるのが、iPhone 4の「アンテナゲート」です。本体側面の金属フレームをアンテナとして利用する革新的なデザインでしたが、「特定の持ち方をすると電波感度が著しく低下する」という致命的な欠陥が発覚。
当時のユーザーからは、戸惑いや怒りの声が上がりました。

左手で普通に握っただけで電波が消えるんだけど…。こんなことある?電話の途中で切れて最悪。

デザインは最高なのに、電話として基本的な性能に問題があるのは信じられない。
当初、創業者のスティーブ・ジョブズが「持ち方が悪い(You’re holding it wrong.)」と発言したことも火に油を注ぎます。


『持ち方が悪い』って…こっちのせいにされたんだけど。ジョブズさん、それはないよ。

製品の欠陥をユーザーのせいにするなんて、信じられない対応だ。
最終的にAppleは問題を認め、全ユーザーに無料でケース(バンパー)を配布。この対応には賛否両論が巻き起こりました。

これは紛れもなくハードウェアの設計問題であり、その後の製品開発に大きな教訓を残しました。iPhone 4Sでは金属フレームに切れ目が入って手で持ってもアンテナ感度が落ちないように改良されたのです。
ベンドゲート(iPhone 6 / 2014年)

大型化・薄型化を果たしたiPhone 6 Plusで発生したのが「ベンドゲート」です。ズボンのポケットに入れていたら本体が曲がってしまった、という報告が相次ぎ、海外のYouTuberが手で簡単に曲げる動画を公開すると、その衝撃は世界中に広がりました。

うわ、手で簡単に曲がってる…!自分のiPhone、ポケットに入れるの怖くなったわ。

薄くて軽いのは嬉しいけど、こんなに強度が低いのは問題外。毎日使うものなのに。
一方で、冷静な声も多く見られました。

いやいや、普通に使っててあんなに曲がるわけないでしょ。わざとやってるだけじゃないの?

確かに薄くて少し不安になるけど、普通に使ってる分には全然問題ないよ。ちょっと騒ぎすぎな気もする。
Appleは「通常の使用で曲がることは極めて稀」と発表。問題が誇張された側面は否めませんが、この騒動が与えたインパクトは大きく、翌年のiPhone 6sでは、より高強度の「7000番台アルミニウム合金」が採用されることになりました。
ちなみに私もiPhone 6 Plusを当時使っていました。ズボンの後ろポケットに入れて使用していましたが、曲がったりはしませんでした。
当時の私の印象では「アンチが言っているだけだな~」との印象でしたが、手で曲げることができないかといえば曲げることはできそうな感じでした。
発熱問題(iPhone 15 Pro / 2023年)

記憶に新しいのが、iPhone 15 Proシリーズで報告された「発熱問題」です。新しいチタンフレームやA17 Proチップが原因ではないかと憶測が飛び交い、「通常の使用でも異常に熱くなる」という声が多数上がりました。

買ってすぐなのに、ちょっと使っただけでカイロみたいに熱くなるんだけど。これ大丈夫なの?

こんなに熱いとバッテリーの寿命が縮みそうで怖い。高い買い物だったのに…初期不良を引いたかな?
しかし、その後のAppleの調査で、原因はハードウェアではなく、iOS 17の初期バージョンのバグと、一部アプリの最適化不足が原因だと判明。ソフトウェア・アップデートによってこの問題は解決され、ユーザーからは安堵の声が聞かれました。

アップデートしたら本当に熱くならなくなった!よかったー。ハードウェアの問題じゃなくて安心した。

やっぱりソフトの問題だったか。早急に対応してくれて助かった。
「ゲート」には至らずとも…記憶に残るその他の問題
“ゲート”というほどの大きな騒動にはならなかったものの、歴代iPhoneにはユーザーを悩ませ、コミュニティを賑わせた小さな問題も数多く存在します。
スコーフゲート(iPhone 5 / 2012年)

アルマイト加工された美しいブラックモデルで発生したのが、通称「スコーフゲート」です。エッジ部分の塗装が非常に剥がれやすく、箱から出した時点で傷がついている「開封の儀」報告も相次ぎました。

ブラックの色味は最高なんだけど、ポケットに出し入れするだけでエッジが銀色になっていく…。
チップゲート(iPhone 6s / 2015年)

iPhone 6sに搭載されたA9チップが、2つの異なるメーカー(SamsungとTSMC)によって製造されていたことが発覚。
ベンチマークテストの結果、TSMC製チップの方がバッテリー持ちが良いとされ、「チップガチャ」だと話題になりました。

自分のiPhoneはどっちのチップだろう…。バッテリー持ちに差があるなんて、同じ値段なのに不公平じゃない?

気にしないようにしてるけど、やっぱりハズレを引いた気分になる。
私もこの当時iPhone 6sを持っていて、どっちのメーカー製なんだろう?と気になって確認した思い出があります。
確か製造番号をサイトに入力するとチップメーカーが確認できるみたいな形だったと思います。
当然Samsung製で残念だったのですが、日本への出荷はほとんどSamsung製だったような気がします。(※未確認情報です)
画面の緑線問題(iPhone X / 2017年)

初の全面OLEDディスプレイを搭載したiPhone Xでは、一部の個体で画面の端に緑色の線が縦に表示され続ける不具合が報告されました。「Green Line of Death」とも呼ばれ、初期ロットの品質が問われました。

買って数日で、突然緑の線が画面に現れて消えなくなった。再起動しても治らないし、これは交換してもらうしかないか…。

最先端のディスプレイなのはわかるけど、基本的な品質は確保してほしい。
これらの問題は、後のモデルで改善されたり、修理プログラムで対応されたりしましたが、ユーザーの期待値が高いからこそ、小さな不具合も大きな話題になることを示しています。
なぜ「ゲート問題」は繰り返されるのか?
iPhone 17の「スクラッチゲート」がそうであったように、すべての騒動が製品の重大な欠陥に起因するわけではありません。では、なぜ新型iPhoneの発売直後には、このような騒動が必ずと言っていいほど発生するのでしょうか。

💢世界中からの厳しい視線
毎年、世界で最も注目される製品の一つであるiPhoneは、メディア、レビアー、そして競合他社のファンから、文字通り「顕微鏡で覗くような」厳しい精査を受けます。どんな些細な不具合も、大きなニュースとして扱われる宿命にあります。
💢SNSによる爆発的な情報拡散
たった一つの動画や投稿が、その信憑性や文脈が十分に検証される前に、数時間で世界中に拡散する時代です。「手で曲がる」「傷だらけ」といった視覚的にインパクトの強いコンテンツは、特にバイラル化しやすい傾向があります。
💢期待の裏返しと確証バイアス
高価な製品であるからこそ、ユーザーの期待は非常に高くなります。その期待が裏切られたと感じた時、失望は大きな批判へと変わります。また、「やはり今回も何かあるはずだ」といった先入観が、小さな問題を大きな欠陥であるかのように捉えさせてしまう側面もあります。
賢い消費者として私たちはどう向き合うべきか

「スクラッチゲート」は、発売直後の過熱した情報に冷静に向き合うことの重要性を教えてくれます。もちろん、「アンテナゲート」のように、実際に製品の欠陥であったケースも存在します。
大切なのは、一つの情報源や扇情的な動画だけで判断を下すのではなく、複数の信頼できるレビューを参考にし、メーカーの公式見解を待つことです。発売から数週間が経てば、初期の混乱は収束し、問題の本質(それが本当に問題であるのかどうかも含めて)が見えてきます。
次回の新型iPhoneが登場する際も、きっと何らかの「ゲート」が私たちの前に現れるでしょう。その時、私たちはこの歴史を思い出し、一歩引いた視点から、その情報の真偽を冷静に見極める必要があるのです。
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