最近、TikTokなどのショート動画で、ある楽曲が大きなブームを巻き起こしています。その曲とは、『お返事まだカナ』。キャッチーなメロディに乗せて歌われるのは、中年男性特有のメッセージ文体、通称「おじさん構文」です。
一見すると「キモい」と感じられるこのおじさん構文が、一体なぜ流行ったのでしょうか?この記事では、話題の歌詞を紐解きながら、そのブームの裏にある「エモい」魅力の正体に迫ります。
そもそも「おじさん構文」とは?

「おじさん構文」とは、主に中年男性がLINEなどのメッセージングアプリで使いがちな、特有の言い回しや絵文字の使い方を指す言葉です。
若者世代から見ると少し時代遅れで、過度に馴れ馴れしいと感じられることが多く、その特徴は以下のようにまとめられます。
✅️絵文字・顔文字の多用: 「😅」「💦」「❗️」や「(^_−)−☆」のような顔文字をやたらと文中に散りばめる。感情を豊かに見せようとする意図があるようです。
✅️カタカナの乱用: 「〇〇チャン、オハヨウ!」「元気カナ?」のように、語尾や挨拶をカタカナにする傾向があります。
✅️不要な句読点: 「今日、お昼は、ラーメンを、食べたよ。」のように、不自然な位置に読点「、」を打ちます。
✅️一方的な近況報告: 聞いてもいないのに「今日は〇〇に行って、お寿司を食べたヨ!」といった日記のような報告を送りがちです。
✅️馴れ馴れしい呼び方: 親しくないうちから「〇〇チャン」付けで呼びかけます。
✅️下心と自己弁護: 軽く食事に誘ったり、褒めたりする内容の後に「ナンチャッテ(笑)」と付け加え、冗談であると自己弁護する傾向も見られます。

これらの特徴は、かつての携帯電話(ガラケー)時代のメール文化が色濃く残っているものとされています。当時は絵文字がコミュニケーションを円滑にする最新のツールであり、その名残でサービス精神から多用してしまうのかもしれません。
話題の楽曲『お返事まだカナ』を歌詞から徹底解説
このブームの火付け役となったのが、吉本おじさん feat. 雨衣による楽曲「お返事まだカナ💦❓おじさん構文😁❗️」です。この楽曲は、「おじさん構文」の特徴を完璧に捉え、その歌詞でユーモラスに表現しています。
歌詞の一部を抜粋
(おっおー お返事まだカナ?) まだまだです 忙しいです (おっおー おじさんじゃ駄目カナ?) 全身鏡をお届けします (おっおー お寿司を食べたヨ!) 死ぬ程興味無いです
『お返事まだカナ』というタイトル自体が象徴的ですが、歌詞では「お寿司を食べたヨ!」といった典型的なフレーズに対し、「死ぬ程興味無いです」と若者側の本音をぶつける掛け合いが面白いポイントです。
サビの歌詞
愛を言葉にできるのは 才能かもです うっうっうー 二度とは見れないキモさが 逆にエモいです
この歌詞の中でも特に秀逸なのが、サビの「二度とは見れないキモさが 逆にエモいです」というフレーズです。単に「キモい」と切り捨てるのではなく、その独特のスタイルを一周回って「エモい(趣がある、面白い)」と感じる若者世代の複雑な心境を見事に描き出しています。
なぜ流行った?「おじさん構文」ブーム3つの理由
では、「おじさん構文」はなぜ流行ったのでしょうか。その背景には3つの大きな理由があります。
①「あるある!」という圧倒的な共感性

なぜ流行ったのか、その最大の理由は多くの若者、特に女性が実際に似たようなメッセージを受け取った経験からくる「あるある!」という強い共感です。この共感が、自分たちの体験をネタにしたショート動画の投稿など、UGCの広がりを後押ししました。
②「キモい」が「エモい」への昇華

理由の2つ目は、「キモい」が「エモい」へと昇華された点です。話題の楽曲の歌詞にもあるように、世代間のコミュニケーションギャップが生み出した不器用な文体への面白がりや、「キモかわいい」に近い愛着が生まれました。
この気味悪さをエンターテインメントとして楽しむ文化が形成されたことが、ブームの核心です。
③ショート動画との抜群の相性

そして3つ目の理由が、TikTokなどのショート動画との抜群の相性です。『お返事まだカナ』のキャッチーな曲と「おじさん構文」という分かりやすいテーマは、短い動画で表現しやすく、LINE画面を模した再現動画やコミカルな寸劇にうってつけでした。
さらに、この音源に合わせて多くの若い女性がダンス動画を投稿したことがブームを決定的なものにし、話題が一気に加速しました。
まとめ
「おじさん構文」がなぜ流行ったのか、その背景には『お返事まだカナ』という楽曲の存在が大きくあります。その歌詞が描く「キモい」けれど「エモい」という絶妙な感覚が共感を呼び、TikTokなどのショート動画を通じて爆発的に拡散されました。
これは、世代間のデジタルコミュニケーションのズレをユーモラスに捉えた現代的な文化現象と言えるでしょう。単に面白がるだけでなく、その背景にある「若者と仲良くなりたい」という不器用な心理にまで思いを馳せてみると、また違った見方ができるかもしれません。
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