大手コンビニチェーンで一人負けの様相を呈していたセブンイレブンの客数が回復傾向にあるようです。最近のセブンイレブンといえば、上げ底問題や見た目の容量偽装問題など、実際に法律に違反している訳ではないけれど、多く見えるような工夫がネットで指摘され逆効果になって若者を中心に話題になっていました。
またそれらのネット上の指摘に対して逆ギレとも言える永松社長の発言も話題となり、まさにネットのおもちゃになっていたセブンイレブンですが、最近は他のコンビニと同じように価格を抑えた商品を開発し、「うれしい値!」で金欠の若者の取り込みを図っていました。
社名 | 営業収益 | 営業利益 | 当期利益 |
セブン&アイ | 60,355 (8.8) | 1,869 (🔻22.4) | 522 (🔻34.9) |
ローソン | 5,721 (4.9) | 548 (3.4) | 349 (8.0) |
ファミリーマート | 2,575 (🔻1.4) | 517 (0.1) | 654 (97.5) |
コンビニ3社(2024年3ー8月期)
セブンイレブンは当期利益が前期比マイナスとなっており、一人負けになっている。
松永社長はメディアの取材に対して、「『うれしい値』は9月から本格展開して、20代男性と女性の新規顧客が増えている。どちらかというと価格感度が高い若い世代の客層が増加傾向にある」と語っています。
「うれしい値!」商品は、物価高を背景とした消費者の生活防衛意識に対応して、来店頻度向上につなげることが目的。
高品質と値ごろ感を両立させるべく、ベンダーとの情報共有を密に行うなど入念に準備を行い、満を持して9月から本格展開しました。現在では、対象品目数は300品に拡大し、TVCMも投下して需要を喚起しています。
しかし企業戦略としてはどこを目指しているのでしょう?
今までのクオリティ重視の「セブンプレミアムゴールド」をはじめとした、付加価値商品の強化からの大幅な転換を目指しているのか?それとも他社とこれ以上差をつけられないための出血防止策としての一時しのぎの策なのか?どうなんでしょうね〜
「うれしい値」はセブンイレブンの迷走の始まり?
消費者の立場からするとセブンイレブンの「うれしい値」戦略はコンビニのおにぎりやお弁当が高騰してきている中で助かる側面は大きいです。しかし低価格戦略は必ずどこかに歪みが生まれるものです。利益率の低下は品質の低下を招きかねません。
今までセブンイレブンに対して一般顧客が抱いていたイメージは下記のようなものです。
- 高品質の商品を取り揃えており、価格は高いものの、味や品質に関しては他社を圧倒
- 店舗が清潔で商品陳列もわかりやすく、買い回りしやすい店内配置
- 他社に比べて価格が高く、量も少なめ
- ATMや接客など安定しており、店ごとのハズレが非常に少なく、初めて入るところでも安心
やはり、セブンイレブンは売り上げ規模ではまだまだ他社とは圧倒的な差があり、安定感はピカイチと言えるでしょう。また最近ネットで噂されるマイナスなイメージもあります。それは下記になります。
- お弁当の量が少なく、またそれを誤魔化すために容器が底上げになっている。
- 容器の印刷が中身と間違えるようになっている。
- 商品をすぐにリニューアルをして価格アップ+容量削減を行なっている。
なかなか辛辣なイメージですね。確かに社長が会見で釈明したくなるのもわかります。でもよく見てください。これらの取り組みは行き過ぎかも知れませんが、品質を維持しようという取り組みが少し間違った道へそれてしまっただけの事です。
他社よりは高いけれども、圧倒的な美味しさや品質の差を全面に押し出し、顧客の安心を得るという方向性は決して間違っていなかったはずです。
それが「うれしい値」で他社と同じような取り組みを進めることは一時的な対策としては間違いではありませんが、セブンイレブンのとるべき本筋ではないはずです。
セブンイレブンが目指す姿と現状のギャップ
とは言え顧客の支持を損なってまで高級化を目指すのも正しいとは言えません。セブンイレブンは高級化を目指しているものの、顧客がついてこれていないと言ったのが現状といったところでしょうか。
その原因には長引く不況と円安・世界的な物価高です。収入が少なくなれば使えるお金も減り、なるべく安く済ませたいと考えるのが人というものですよね。
セブンイレブンの成長戦略を阻害しているのはこれらの要因であり、決して高級化路線自体が誤っている訳ではないでしょう。
もちろんセブンイレブン内でもそのことは十分に認識しており、物価高による不況の中でいかに顧客単価を上げるかに非常に苦労をしているのが見受けられます。
例えば、セブンイレブンは現在「お店で揚げたドーナツ」の導入を急ピッチで進めています。導入店舗ではパン生地で包んだカスタード、ドーナツ型のチョコ、メープルの3種類がレジ横のケースに並んでいます。
2025年2月までに全国約2万1000店の設置可能な店舗すべてに展開する方針です。10年前にもドーナツの取り扱いを始め、不調で終了した経緯を覚えている方も多いでしょう。それでも再度挑戦するのはやはり顧客単価のアップと他社との差別化といった方針からくるものでしょう。
今後セブンイレブンが取り組むべき事
「うれしい値」で若年層を中心に来店客が復調しつつあるセブンイレブンですが、答えはそこにはないと私は思います。他社と同じ競争になる事はかえって他社に利があるだけで、セブンイレブンにとって長期的にはマイナス効果しかないと考えます。
ではセブンイレブンが今後どのようにするべきなのか私が勝手にセブンイレブンの歩むべき道を考えました。
対象は中短期的には既存顧客(40代以上)、長期的には30代未満
今、どこの企業も20代〜30代の顧客取り込みに必死です。なぜならその年代に支持されると長く支持されることに繋がり、企業の安定につながるからです。しかしそこの注力をし過ぎるのも問題です。若い世代は他の年代に比べると移り気で、顧客獲得およびロイヤリティ化は非常に難しいのです。
今するべき事は長らくセブンイレブンを愛してきた顧客層(40代以上)をしっかりと繋ぎ止め、さらなるロイヤリティ化をする事でしょう。ここを蔑ろにするとそもそもの基盤が揺らぎます。そんな企業よく見かけませんか?
ただ、若い顧客の確保はもちろん重要なので既存顧客をしっかり固めながら、少しずつ力を入れていけばいいのではないでしょうか。
他のコンビニとの差をもっと広げ圧倒的なものにする
先ほど出てきたセブンイレブンの長所がまさに他社との差となっています。ここは一朝一夕で実現できるものではありません。しかし気を抜くと他社も必死に追いつこうとしてきます。諦めるくらいの圧倒的な差をつけるべきです。
キーワードは「美味しい」「品質」「国産」「レア感」「プレミアム感」の5つでしょう。特に最後のレア感とプレミアム感は「感」です。感じてもらえれば勝ちです。イメージ戦略が非常に重要になります。
上げ底やプリントなどで誤魔化すのではなく、しっかりと商品にストーリーをつけて開発し、容器は容量を誤魔化すためではなく、顧客満足度を高めるために工夫をするべきです。
サービス面でオーナー裁量を広げ真の地域密着化を図る
これはフランチャイズである限りは難しい問題です。価格や取り扱い商品に関しては本部の意向が優先されるのは正しいと思います。しかし付加価値の部分でオーナーが経営にもっと参画できる部分を考える事は大事だと思います。
オーナーの裁量でできる事が増え、それによって店舗の売り上げが上がったり、顧客の満足度が上がることは全てが上手くいくための大事な礎だと言えます。「配達」、「取り置き」、「自治会への優遇」など人と人との繋がりを大事にするサービスにオーナーが参画できるようにすることが今後のコンビニの経営にとって非常に重要になるのではないでしょうか。
出店数での売上増をやめ、既存店売上のアップを第1とする
全国のコンビニ数は5万7千店にもなります。1県あたり1,200店舗以上ある計算です。もう出店の時代は終わっています。既存店の売上をいかに最大化するか、つまり各店舗の商圏範囲内の何%の方に年間何回きてもらって、1回にいくらお買い物をしてもらうかが大事になります。
これらを上げるためには新たな取り組みや顧客満足度の向上といった取り組みが不可欠です。これは規模でNo1を走るセブンイレブンにとって一番有利に取り組めることでしょう。手を抜かない限りは。
ネット決済・セルフ決済・ポイント囲い込みをさらに強化する
セブンイレブンはATMでも大きな収益を上げています。しかしATMは運用コストもかかり、セキュリティ上のリスクも発生します。今後さらなるキャッシュレス化を進めることは非常に重要です。
セブンイレブンの場合は三井住友カードと提携して最大20%Vポイント還元を実施しています。他社も各決済会社や決済手段を利用した囲い込みが進んでいます。
これらは必然的にコストとなり商品価格に転嫁されています。どこかのタイミングで囲い込みに限界が来たらこれらのサービスは劣化や廃止する可能性が高いでしょう。
しかし今の日本人は非常にポイントに敏感でサービスが改悪されればすぐにでも他社に乗り換えるかも知れません。囲い込みまでの手段と考えるのではなく、永続的な囲い込み手段としてもっとえげつなく差別化するポイントサービスを開発するのはアリではないでしょうか? nanacoの超強化そろそろいいかも知れません。
今後のコンビニ業界で生き残るのはどこでしょうか?
さて、セブンイレブンに関して色々と話をしてきましたが、今後生き残るコンビニはどこになるでしょうか。私はセブンイレブンが道を誤らなければセブンイレブンが生き残ると考えていますが、今の社長の元では無理だと思います。
今後一番成長可能性があるのはファミリーマートでしょう。新たな取り組みの速さや斬新さなど現在のところファミリーマートが一歩先を進んでいると思います。株の上場廃止もプラスに働いていると思います。また地域との連携もエリアごとの動きが始まっているようで2025年はファミマ急成長元年になるのではと密かに思っています。
いずれにせよ曲がり角に来ているコンビニ業界の今後にはまだまだ目が離せませんね。
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