2026年9月13日の沖縄県知事選で、大きな変化が起きました。
3期目を目指した現職・玉城デニー氏を破り、42歳の新人・古謝玄太氏が当選確実となったのです。琉球新報などが13日夜に速報しました。
今回の結果を、単なる「現職が負けた選挙」と見ると本質を見落とします。
沖縄では長年、米軍基地問題を背景に「オール沖縄」と呼ばれる勢力が大きな力を持ってきました。
しかし近年、その勢いには明らかな変化が見えていました。
さらに玉城県政では「ワシントン事務所問題」が表面化し、SNSでは「左派寄り」「親中的ではないか」といった批判も拡散。
なぜ玉城デニー氏は負けたのでしょうか。
今回の知事選は、これまで本土とは少し違う政治の流れを持っていた沖縄でも、何かが変わり始めた選挙だったのかもしれません。
前回の「玉城票」まで古謝氏へ流れた
今回、まず注目したいのが出口調査です。
琉球新報社などが実施した出口調査では、前回の沖縄県知事選で玉城氏に投票した人のうち、約3割が今回は古謝氏に投票していました。
これは大きいです。
単純に保守系の票がまとまっただけではありません。
「前回は玉城氏を支持した人まで離れた」
ということになります。
今回の知事選を考えるうえで、ここは非常に重要でしょう。
では、なぜ玉城氏から支持者が離れていったのでしょうか。
玉城県政を揺らした「ワシントン事務所問題」

玉城県政を語るうえで無視できないのが、沖縄県の「ワシントン事務所問題」です。
沖縄県自身の調査で、米国で設立された「Okinawa Prefecture DC Office, Inc.」をめぐり、複数の行政手続き上の問題が確認されています。
会社設立について県として文書による意思決定がされていなかったほか、県が保有する株式が公有財産として適切に管理されていませんでした。
さらに県職員が会社役員を兼ねながら必要な営利企業従事許可がなく、県出資法人として議会へ提出すべき経営状況の報告もされていませんでした。
問題は県議会の百条委員会にまで発展しています。
沖縄県自身も報告書で、当然行うべき事務が行われなければ「何らかの隠ぺいを疑われ公務に対する信頼を失う」とまで指摘しています。
もちろん、これをもって「玉城デニー氏本人が不正をしていた」とすることはできません。
それでも県民からすれば、
「なぜこんな基本的な手続きすらできていなかったのか?」
という疑問は残ります。
しかもワシントン事務所は、沖縄の米軍基地問題を米国側へ直接訴えるための重要な拠点でした。
その象徴的な場所で問題が噴出しただけに、玉城県政にとってかなり痛い出来事だったことは間違いないでしょう。
ワシントンDCオフィス社は2025年6月までに解散・清算され、事務所も閉鎖されています。
「親中」「左派」というイメージも玉城氏を苦しめた?

玉城氏をめぐっては以前から、
「左派勢力との距離が近すぎるのではないか」
「中国への姿勢が甘いのではないか」
「県民生活より基地反対を優先しているのではないか」
といった批判がSNSなどで繰り返されてきました。
もちろん、ネット上には根拠の確認できない話や、単なる政治的レッテル貼りも含まれています。
そのため「玉城氏は親中だから負けた」「左翼だから県民に見放された」とまで断定することはできませんが、そう思われてもおかしくない言動が多かったのも事実です。
中国をめぐる安全保障や台湾情勢への関心が高まる中で、従来の反基地・反政府色が強い政治スタイルに違和感を持つ有権者が増えていた可能性はあるでしょう。
実は「オール沖縄」の苦戦は以前から始まっていた
今回突然、沖縄の政治が変わったわけではありません。
その兆候は以前からありました。
市長選などでも「オール沖縄」系候補が苦戦する選挙が増え、保守系候補が玉城氏支持層の一部まで取り込む現象もすでに起きていました。
例えば2022年の那覇市長選では、自公が支援した知念覚氏が当選。出口調査では、直前の知事選で玉城氏に投票した人の約4人に1人が知念氏へ流れていました。
そして今回、ついに県政トップを決める知事選で玉城氏が敗れました。
突然の異変ではなく、
「数年前から進んでいた変化が、知事選まで到達した」
と考える方が自然でしょう。
沖縄県民も「基地だけではない」と考え始めた?

今回の選挙では、米軍基地問題だけでなく、物価高、経済、観光、交通、子育てなど幅広いテーマが争点となりました。
ここに今回の選挙結果を読み解く重要なヒントがあります。
沖縄県民が基地問題を気にしなくなったわけではありません。
ただ、「基地問題だけで知事を選ぶ時代ではなくなってきた」のではないでしょうか。
観光客が戻ってきても、自分たちの生活が豊かになったという実感がなければ意味がありません。
子育て、交通、雇用、福祉など日々の生活に直結する問題もあります。
そうなれば、「政府とどう戦うか」だけでなく、「自分たちの暮らしをどう良くしてくれるのか」で知事を選ぶ人が増えても不思議ではありません。
沖縄にも「日本全体と同じ流れ」が来たのか

個人的に今回もっとも興味深いのがここです。
沖縄は米軍基地という特殊な事情もあり、本土とは少し違った政治構造を持つ地域でした。
国政で保守勢力が強くなっても、沖縄県政ではオール沖縄が強い。
そんな状態が長く続いてきました。
しかし今回、その沖縄でも変化が起きました。
これを単純に「沖縄が右傾化した」と言い切るのは早いでしょう。
むしろ、
「思想より生活」
「政府との対立より現実的な県政運営」
「基地問題だけでなく県政全体を見る」
という方向へ有権者の意識が変化していると考えた方が、今回の結果を説明しやすいように思います。
そこへワシントン事務所問題による県政への不信や、玉城氏についた左派的なイメージ、オール沖縄への飽きなどが重なった。
その結果として、前回まで玉城氏を支持していた人の一部まで古謝氏へ動いたのではないでしょうか。
玉城デニー氏の敗北は「黒い疑惑」だけでは説明できない

玉城デニー氏について検索すると、現在でもさまざまな疑惑や噂が出てきます。
しかし、それだけで今回の敗北を説明してしまうのは少し乱暴です。
重要なのは、ネット上の噂ではなく、実際に問題となったワシントン事務所問題があり、同時にオール沖縄の苦戦が続き、今回の出口調査では前回玉城氏に投票した層からも票が流出したことです。
そしてその背景には、沖縄県民が知事に求めるもの自体の変化があるのかもしれません。
玉城デニー氏が負けた。
それだけでも大きなニュースです。
しかし今回もっと注目すべきなのは、
「沖縄の政治の前提そのものが変わり始めたのではないか」
という点でしょう。
古謝玄太氏の当選によって、沖縄県政は大きな転換点を迎えます。
今回だけの一時的な政権交代なのか。
それとも「オール沖縄」という一つの時代が、本格的に終わり始めたのか。
その答えは、これからの沖縄県政ではっきりしてきそうです。


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