2025年、JRAの競馬学校を卒業する新人騎手がゼロになるという、1982年の開校以来初めての事態が報じられました。
未来のスター騎手を目指す若者たちが集まる競馬学校で、一体何が起きているのでしょうか。
話題のワダイでは、退学者が相次ぐ背景にある競馬学校の厳しいルールやその理由について詳しく解説します。
1982年の開校以来初、新人騎手がデビューしない異常事態

今回、来春のデビューがゼロとなったのは、2023年に入学した競馬学校騎手課程の第42期生です。
関係者によると、入学した7人の生徒が、規定の体重を維持できなかったり、通信機器の使用ルールを守れなかったりといった理由で次々と退学。留年したケースも含め、この期の生徒が誰もいなくなってしまいました。
これまで毎年少なくとも3人の卒業生を送り出してきたJRA競馬学校にとって、これは前代未聞の出来事です。
想像を絶する競馬学校の厳しいルール
なぜ、これほどまでに退学者が相次いでしまうのでしょうか。その背景には、騎手という職業に求められる、極めて厳しい自己管理能力を養成するためのルールがあります。
(1) 徹底された体重管理

騎手にとって体重管理は最も重要な任務の一つです。競馬学校では、入学時から卒業まで、常に厳しい体重制限が課せられます。
🏇 入学時の体重制限
応募時の年齢によって上限があり、概ね46kg〜49kg以下と定められています。
🏇 在学中の指定体重
生年月日ごとに指定体重が決められており、毎朝5時の検量でチェックされます。1gでもオーバーすれば、厳しい指導が待っています。
🏇 栄養管理された食事
寄宿舎の食堂では、管理栄養士が栄養バランスと体重コントロールを考えた食事を提供しますが、生徒たちは常に自身の体重推移を記録し、自己管理しなければなりません。
体重を維持するために食事を極端に制限したり、過酷なトレーニングを自らに課したりする生徒も少なくなく、心身に変調をきたし、退学に至るケースもあります。
(2) 外部との接触を断つ厳しい生活

公正な競馬を維持するため、また、訓練に集中するために、競馬学校の生活は非常に厳しく律せられています。
🏇 通信機器の厳格な管理
スマートフォンなどの通信機器は、八百長などの不正行為を防ぐため、厳しく管理されます。今回の退学者続出の理由の一つにも「通信機器の使用ルール違反」が挙げられていました。プロの騎手も、レース前日から調整ルームに入り、外部との通信を一切断たれることが義務付けられています。
🏇 外出・外泊の制限
訓練期間中は、基本的に外出や外泊は認められません。社会から隔離された環境で、約3年間、競馬漬けの毎日を送ります。
(3) 技術と精神力を試される厳しい訓練

朝5時の検量から始まり、厩舎作業、実技訓練、学科授業と、一日中息つく暇もないスケジュールが組まれています。
技術が上達しない、あるいはレースへの恐怖心が拭えないといった理由で、留年を宣告されたり、自主退学を選んだりする生徒もいます。
過去には、後にトップジョッキーとなった騎手でさえ、在学中のあまりの厳しさに「辞めたい」と泣きながら電話したというエピソードも残っています。
なぜこれほどまでに厳しいのか?

競馬の騎手は、数億、数十億という大きなお金が動く世界で、500kg近いサラブレッドを操り、時速60km以上で競い合う非常に危険な職業です。
一つの判断ミスが、自身や他の騎手の落馬、ひいては命に関わる大事故に繋がります。また、公正確保の観点からも、常に高い倫理観と自制心が求められます。
競馬学校の厳しいルールと3年という養成期間は、そうした過酷な勝負の世界で生き抜くための技術、精神力、そして何よりも強い自己管理能力を身につけるために必要不可欠なものなのです。
まとめ

今回、競馬学校の新人騎手がゼロになるというニュースは、私たちに騎手という職業の厳しさを改めて突きつけました。
華やかな世界の裏側には、私たちの想像を絶するような厳しい訓練と、それを乗り越えた者だけが立てる世界があります。
今回の事態を乗り越え、来年以降、この厳しい環境を突破した新たなスター騎手が誕生することを心から期待したいと思います。
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