なぜ財政赤字がふくらんでも日本は倒産しないの?

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倒産 金融・投資
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「日本の借金は1200兆円超え、国民一人当たり1000万円」

そんなニュースを見聞きし、この国はいつか破綻してしまうのではないかと不安に思ったことはありませんか?しかし、政府は財政赤字を拡大し続けているように見えます。なぜ日本は巨額の借金を抱えながらも、倒産せずにいられるのでしょうか。

その答えは、現代の世界経済が「借金」を前提に成り立っているという、壮大な仕組みの中に隠されています。この記事では、その仕組みと歴史的背景を紐解き、日本の未来、そして私たちがどう向き合うべきかを解説します。

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増え続ける世界の借金

世界の借金

実は、借金を増やしているのは日本だけではありません。2024年、世界の国の借金総額は、史上初めて100兆ドル(約1京4000兆円)という天文学的な数字に達しました。もう想像もつかない額ですよね。

国がそれほど借金をする主な理由は3つあります。

💰 経済の安定化
不景気で税収が落ち込んでも、公共事業や減税でお金を使うことで、経済の冷え込みを防ぎます。

💰 未来への投資
道路や通信網などのインフラ整備の費用を、その恩恵を受ける未来の世代にも公平に負担してもらうため、借金で賄います。

💰 予期せぬ危機への対応
戦争やパンデミック、大規模災害など、突発的な支出が必要な事態に備えるためです。

    このように、借金は現代国家が経済を運営し、国民の生活を守るために不可欠なツールとなっているのです。

    お金の正体と「信用創造」

    信用創造

    そもそも、私たちが使っている「お金」とは何でしょうか。実は、そのほとんどは誰かの「借金」によって生まれています。これを信用創造と呼びます。

    例えば、企業が銀行から1億円を借りる時、銀行は金庫から1億円の現金を渡すわけではありません。ただ、その企業の預金口座に「1億円」とコンピューターで記録するだけです。この瞬間に、世の中に新しいお金が1億円生まれるのです。

    つまり、世の中のお金の大部分は、誰かが借金をした記録そのもの。もし世界中の全ての借金が一斉に返済されたら、ほとんどのお金は消滅し、経済は崩壊してしまいます。

    経済成長とは、取引の活発化であり、そのためにはより多くのお金が必要になります。そのお金は、新たな借金によって供給され続けるのです。

    ニクソン・ショックとドル基軸通貨体制

    ニクソン・ショック

    かつて、お金の価値は「金(ゴールド)」によって保証されていました(金本位制)。しかし、1971年のニクソン・ショックで、アメリカドルと金の交換が停止されます。この瞬間、お金の価値は金という物質的な裏付けを失い、「信用」のみによって支えられるようになりました。

    これにより、各国、特に基軸通貨であるドルを持つアメリカは、金の保有量に縛られることなく、理論上は無限に借金(国債発行)ができるようになったのです。これが、現代まで続く世界的な債務膨張時代の幕開けでした。

    消費

    アメリカは自国で印刷したドルで世界中からモノやサービスを買い、その代金として各国に渡ったドルは、安全資産である米国債の購入という形で再びアメリカに還流します(ドルリサイクリング)。

    このサイクルによって、アメリカは借金を重ねて消費を続け、他国は輸出で経済成長するという、奇妙な共存関係が成り立っているのです。

    借金膨張の3つの要因

    借金膨張

    ではなぜ、世界の借金はこれほどまでに膨張し続けるのでしょうか。主に3つの要因が指摘されています。

    💰 民主主義社会の構造
    選挙で選ばれる政治家は、将来の負担(増税など)よりも、有権者がすぐに実感できる利益(公共サービスや補助金)を優先しがちです。その結果、財政赤字が拡大しやすくなります。

    💰 金融化の進展
    1980年代以降、あらゆる借金が金融商品として売買されるようになり、信用創造のスピードと規模が飛躍的に増大しました。中央銀行も経済を刺激するために低金利政策を続けたため、借金をしやすい環境が続きました。

    💰 先進国の長期停滞
    人口の伸び悩みや技術革新の変化により、民間企業が大規模な設備投資をしなくなりました(投資不足)。一方で、高齢化などで将来不安から貯蓄は増え続けています(貯蓄過剰)。この「余ったお金」を有効活用し、経済の失速を防ぐ役割を、政府の借金(財政出動)が担っている側面があります。

      巨大な借金を抱えた国の4つの未来

      デフォルト

      これほどの借金を抱えた国々は、どのような未来を辿るのでしょうか。歴史を振り返ると、主に4つのシナリオが考えられます。

      💸 インフレによるお金の価値の下落
      政府が意図的にお金の量を増やしてインフレを起こし、お金の価値を下げることで借金の実質的な負担を軽くする方法です。

      💸 デフォルト(債務不履行
      公式に「借金を返せません」と宣言すること。借金はチャラになりますが、国の信用は失墜し、経済は大混乱に陥ります。アルゼンチンやエクアドルなどデフォルトした国はいくつかありますが、どの国もデフォルト後は低迷しています。

      💸 問題先送り
      インフレもデフォルトも起こさず、経済は停滞したまま問題を先送りし続ける状態。国債の発行額がうなぎ上りとなり、金利も上げられないので経済成長は見込めない状況が続きます。日本がまさにこの道を歩んでいます。

      💸 金融抑制
      国民や国内の金融機関に、市場金利より低い不利な金利で国債を買わせることで、政府が安く借金を続ける方法です。

        日本が今のところデフォルトに陥らない最大の理由は、借金が自国通貨(円)建てであること、そしてその国債の半分以上を日本銀行が買い支えている「通貨主権国」だからです。

        外国からドル建てで借金をしている国とは、根本的に事情が異なります。この「日本化」という状態は、社会の安定を保ちつつも、経済の活力を失わせる諸刃の剣と言えるでしょう。

        今後の見通しと我々がするべきこと

        金融システム

        現代経済は、借金なくしては成り立たないシステムです。しかし、このシステムが格差の拡大を助長しているという側面も無視できません。

        借金によって市場に流れたお金は、株や不動産といった資産価格を押し上げ、もともと資産を持つ富裕層をさらに豊かにする一方で、資産を持たない人々の不公平感を増大させ、社会の分断を生む一因ともなっています。

        では、私たちはこの複雑な現実とどう向き合えばよいのでしょうか。

        まず最も重要なのは、こうした経済の仕組みを正しく理解することです。なぜ政府が借金をするのか、お金とは何かを知ることで、ニュースの裏側にある大きな流れを読み解き、感情的な議論に惑わされずに済みます。

        銀行

        「借金=悪」という単純なレッテル貼りをやめ、その功罪を冷静に見極める視点が不可欠です。

        そして社会全体としては、この借金に依存した経済システムが持続可能なのかを問い続け、将来世代に過度な負担を押し付けないための議論を深めていく必要があります。

        経済成長と財政規律のバランスをどう取るのか。その答えは一つではなく、私たち一人ひとりが経済の当事者として考え、声を上げていくことが、より良い未来への第一歩となるはずです。

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