空気が澄んだ夏の夜、ふと空を見上げると、一筋の流れ星が尾を引く。そんな美しい光景を見せてくれる「ペルセウス流星群」の季節が、今年もやってきました。
毎年お盆の時期に私たちを楽しませてくれるこの流星群は、三大流星群の一つに数えられ、観測しやすさとその美しさで多くの人々に愛されています。この記事では、その歴史から不思議な逸話、そして今年の楽しみ方まで、ペルセウス流星群の奥深い世界へとご案内します。
夜空を流れる涙の歴史 – ペルセウス流星群とは

私たちが目にする流れ星、その正体は宇宙に漂う小さな塵(ちり)です。ペルセウス流星群の塵は、「スイフト・タットル彗星」という彗星が軌道上に残していったものです。地球がこの塵の帯に突入することで、塵が大気と激しく衝突し、光を放つのです。
その流れ星が、あたかもペルセウス座の一点から四方八方に飛び出してくるように見えることから、「ペルセウス流星群」と呼ばれています。

この流星群の観測記録は非常に古く、最も古いものは西暦36年の中国の記録に遡ります。ヨーロッパでは、キリスト教の聖人「聖ロレンツォ」がローマ皇帝の迫害によって殉教した8月10日の夜に、この流星群がよく見られることから、「聖ロレンツォの涙」というロマンチックな別名で呼ばれてきました。夜空を流れる星は、聖人が流した涙だと信じられていたのです。
記録に残る夜空のショー – 過去の印象的な出現

ペルセウス流星群は毎年安定して多くの流星を見せてくれますが、歴史上、特に多くの流星が観測された年がいくつかあります。
記憶に新しいのは2021年です。この年は、通常の極大(活動のピーク)から約1日半後に、予想外の規模で活動が活発化し、多くの観測者を驚かせました。
また、母天体であるスイフト・タットル彗星が地球に接近した翌年の1993年には、1時間に数百個という、まさに「星の雨」と呼ぶにふさわしい大出現が見られました。これらの年は、月明かりの条件にも恵まれ、多くの人々の心に鮮烈な記憶を刻んでいます。
星降る夜のミステリー – 語り継がれる逸話

ペルセウス流星群にまつわる最も有名な逸話は、前述の「聖ロレンツォの涙」でしょう。彼の命日に流れる星に願いを唱えると、その願いが叶うという言い伝えがイタリアなどに残っており、今でも多くの人々が夜空を見上げます。
また、流星群の名称の由来となったペルセウスは、ギリシャ神話に登場する英雄です。怪物メドゥーサを討ち取り、囚われの王女アンドロメダを救うという勇壮な物語の主人公であり、秋の夜空にはアンドロメダ座やカシオペヤ座など、この神話に登場する星座たちが共に輝きます。流れ星を見ながら、壮大な神話の世界に思いを馳せるのも一興です。

明確なオカルトというわけではありませんが、流星群の時期には、UFOなどの不思議な目撃情報が増えるという話もあります。夜空を見上げる人が増えるため、普段は気づかない光に遭遇する機会が増えるのかもしれません。
2025年、夏の夜空を見上げよう – 観測ガイド

今年のペルセウス流星群の活動は、8月12日の夜から13日の明け方にかけてピークを迎えます。
🌠 極大時刻
2025年8月13日の午前5時頃と予想されています。
🌠 見やすい時間帯
放射点が高く昇る12日の夜半過ぎから、空が白み始める13日の未明までが最もおすすめです。
🌠 観測条件
残念ながら、2025年は満月(8月9日)を過ぎたばかりの明るい月が夜空を照らすため、観測条件としてはあまり良くありません。月明かりの影響で、暗い流れ星は見えにくくなってしまいます。
🌠 見方のコツ
- 月を背にする:月の光が直接目に入らないよう、月とは反対側の空を眺めるのがポイントです。
- 空を広く見る:流れ星は空のどこにでも現れます。特定の方角にこだわるより、ぼんやりと空全体を見渡しましょう。
- 暗闇に目を慣らす:目が暗さに慣れるまで、最低でも15分は観察を続けてみてください。
- 楽な姿勢で:レジャーシートに寝転がるなど、首が疲れない楽な姿勢で観測するのが長続きの秘訣です。
街明かりが少なく、空が広く見渡せる場所が理想ですが、無理に遠出をしなくても、近くの公園などでも楽しむことは可能です。

ペルセウス流星群は明るい流星が多いことで知られているため、月明かりに負けない立派な流れ星に出会えるチャンスは十分にあります。
まとめ

ペルセウス流星群は、その長い歴史の中で、人々の祈りや物語と共に夜空を流れ続けてきました。古代の記録からキリスト教の伝説、そしてギリシャ神話の英雄譚まで、一つの流星群がこれほど豊かな文化的背景を持っているのは非常に興味深いことです。
2025年は月明かりというハンデキャップはありますが、それもまた自然現象の一部。雲の切れ間や月の傾き具合など、その時々の条件の中で見つけた一筋の光は、きっと格別なものになるでしょう。
夏の夜、少しだけ夜更かしをして、はるか昔から降り注ぐ「聖ロレンツォの涙」に、あなたも願いをかけてみてはいかがでしょうか。
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