「あなたとデートしたいのですが」 X(旧Twitter)で、見知らぬアカウントから突然こんなダイレクトメッセージ(DM)が届き、戸惑いや不審感を抱いたことはありませんか?
少しドキッとするその言葉の裏には、あなたの優しさや心の隙につけ込み、金銭や個人情報を狙う巧妙な罠が隠されています。この記事では、なぜそのようなDMが送られてくるのか、その本当の目的と、あなた自身を守るための具体的な方法を詳しく解説します。
そのDMは「ロマンス詐欺」の入り口です
出会い目的ではなく、あなたのお金が目的です

まず結論からお伝えします。面識のない相手から届く「デートしたい」というDMは、純粋な出会いを目的としたものでは決してありません。 そのほとんどが、あなたを騙して金銭を奪う「ロマンス詐欺」や「投資詐欺」の入り口です。
相手は恋愛感情を巧みに利用してあなたの警戒心を解き、最終的には様々な口実でお金を要求してきます。甘い言葉に隠された本当の目的を理解し、冷静に対処することが何よりも重要です。
なぜ「デート」という言葉で近づいてくるのか?
詐欺師が隠している3つの真の目的
では、なぜ詐欺師たちは「デート」という言葉を使い、あなたに近づいてくるのでしょうか。その背景には、周到に計算された3つの目的があります。
1. 恋愛感情を利用して金銭をだまし取る「ロマンス詐欺」

これが最も多い目的です。詐欺師は、軍人、医師、海外で成功した実業家など、社会的信用が高く魅力的に見える人物になりすまします。
- 手口の流れ
- 関係構築: 毎日、甘い言葉でDMを送り、あなたに特別な好意があるように見せかけ、信頼関係を築きます。
- 問題発生: 関係が深まった頃合いを見計らい、「君に会いに行くためのチケット代が足りない」「日本へ送ったプレゼントが税関で止まってしまい、関税の支払いが必要だ」など、緊急性を装った問題が発生したと告げます。
- 金銭要求: あなたの同情や「助けてあげたい」という気持ちを利用し、送金を要求します。一度送金してしまうと、「追加で費用が必要になった」などと、要求はエスカレートしていきます。
2. 「二人の将来のため」と持ちかける「投資詐欺」

最近では、ロマンス詐欺がさらに巧妙化し、偽の投資話に誘導するケースが急増しています。これは被害額が非常に高額になりやすい、極めて悪質な手口です。
- 手口の流れ
- 信頼関係の構築: ロマンス詐欺と同様に、まずはあなたとの信頼関係を築くことに専念します。
- 投資への誘導: 「僕がやっているこの投資は絶対に儲かる」「二人の将来のために、一緒にお金を増やそう」といった言葉で、偽の投資サイトやアプリに誘導します。
- 偽の成功体験: 最初は少額の投資で「利益が出ている」ように見せかけ、あなたを信用させます。画面上では利益が増えているように見えますが、これは詐欺師が操作している偽の数字です。
- 高額な入金と出金不可: 「もっと大きな利益を得るために、追加で入金しよう」と、より高額な投資を促します。しかし、いざ利益を出金しようとすると、「税金の支払いが必要」「システム手数料がかかる」などと理由をつけられ、一切出金には応じません。最終的に相手と連絡が取れなくなり、すべてのお金を失います。
3. 他の犯罪に悪用する「個人情報の収集」

やり取りの中で、あなたの氏名、生年月日、住所、勤務先、家族構成といった詳しい個人情報を聞き出そうとします。これらの情報は、あなたになりすまして消費者金融で借金をする、別の詐欺のターゲットリストとして売買する、といった二次的な犯罪に悪用される危険性があります。
実際に起きている被害と公的機関の警告
これは他人事ではない、実際の被害ケース

こうした手口は、決して遠い世界の話ではありません。警察庁や国民生活センターには、以下のような相談が実際に数多く寄せられています。
海外在住の軍人を名乗る男(50代女性の被害)
SNSで知り合った海外在住の軍人を名乗る男と親密に。男は「君に会いに行くための特別休暇を申請したいが、費用が必要だ」と送金を要求。
女性が30万円を送金すると、今度は「日本で一緒に暮らすための資金を送りたいが、手数料が必要だ」と、次々にお金を要求され、最終的に合計500万円以上をだまし取られた。
著名な投資家をかたる男(40代男性の被害)
有名な投資家を名乗るアカウントからDMが届き、LINEグループに招待された。グループ内では他のメンバーが利益を出している投稿が相次ぎ、信用してしまった。
勧められたFXの自動売買ツールを30万円で購入し、指示通りに入金。画面上では利益が出ていたため追加で200万円を入金したが、出金しようとした途端に相手と連絡が取れなくなった。
警察庁や国民生活センターは、「SNSで知り合った、会ったことのない相手からのお金の話はすべて詐欺を疑ってほしい」と強く警告しています。
【結論と対策】今すぐあなたができること
甘い言葉は罠。冷静に無視・報告・ブロックを!
もう一度結論です。Xで届く「デートしたい」というDMは、あなたの心を揺さぶるための詐欺の始まりの合図です。その言葉の先には、金銭や個人情報を狙う明確な悪意が潜んでいます。
このようなDMを受け取った際は、以下の4つのステップで冷静に対処してください。
ステップ1:完全に無視する(返信は絶対にしない)

最も重要なのが「反応しない」ことです。一言でも返信してしまうと、相手のリスト上で「アクティブなユーザー(反応があるカモ)」と認識され、さらにしつこくDMが送られてきたり、別のアカウントからアプローチされたりする原因になります。興味本位でも絶対に返信しないでください。
ステップ2:相手のアカウントを「報告(通報)」する

Xの運営に、下記の手順で規約違反のアカウントであることを知らせましょう。
- DM画面の右上にある「i(インフォメーション)」マークをタップします。
- 「(相手のアカウント名)を報告」を選択します。
- 報告理由として「スパム」→「不審なリンクや詐欺の疑い」などを選び、送信します。
ステップ3:相手のアカウントを「ブロック」する

報告と合わせてブロックすることで、相手からの接触を完全に断ち切ることができます。
- 相手のプロフィール画面、またはDM画面の右上メニューから「ブロック」を選択します。
- 確認画面で「ブロックする」をタップすれば完了です。
ステップ4:DMの受信設定を見直す

今後の予防策として、DMの受信設定を変更するのも非常に有効です。
- Xの「設定とプライバシー」→「プライバシーと安全」→「ダイレクトメッセージ」と進みます。
- 「ダイレクトメッセージを許可するアカウント」を「認証済みアカウント」または「フォローしているアカウントのみ」に変更します。 これにより、見知らぬ不審なアカウントからのDMを大幅に減らすことができます。
もし少しでも不安を感じたり、万が一お金を支払ってしまった場合は、一人で抱え込まず、すぐに警察相談専用電話「#9110」や、お住まいの地域の消費生活センター「188」に相談してください。
SNSは便利なツールですが、その裏には常に危険が潜んでいることを忘れず、賢く利用してあなた自身の大切な資産と未来を守りましょう。
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