無敗王者に生まれた“スキ”──ラスベガスで喫したキャリア2度目のダウン

2025年5月4日、ラスベガスのTモバイルアリーナで、4団体統一スーパーバンタム級王者・井上尚弥がアメリカのラモン・カルデナスと対戦し、8ラウンドTKO勝利を収めました
しかしこの試合、井上にとって忘れられないものになりました。ネリ戦に続きダウンを奪われることになったのです。
ダウンを奪ったのは、第2ラウンド。カルデナスの鋭い左フックが接近戦で井上の顔面を捕え、会場は騒然。これまで「圧倒的に無敵」のイメージがあった井上の、“攻略の兆し”が一瞬見えた瞬間でした。
左フックへの脆さ、攻略の糸口か?

タパレス戦、ネリ戦に続き、3戦連続でやや被弾が目立つ展開。しかも2戦連続して先にダウンを奪われました。
今回特に露呈したのは、接近戦でのガードの隙とパンチモーションの小さなクセです。カルデナス自身が語ったように、

「彼の手がパンチを打つときに少し下がる。そのタイミングを狙っていた」
という分析通り、タイミングさえ合わせられれば、井上といえども“倒せる”というイメージを対戦相手に与えたのです。
それでも怪物のまま──“修正力”と“終盤の爆発力”

ただし、井上はそこからの立て直しが異常でした。
第7ラウンドに右ストレートでダウンを奪い返し、第8ラウンドでは一気に畳みかけてTKO。
この“冷静さ”と“試合中の進化”こそ、他の王者と一線を画す部分でしょう。

「落ち着いてポイントをピックアップしていくことを考えた」
と語る通り、ダウン後のリカバリーは驚異的で、試合を通じて3ラウンド以降の支配力はむしろ増していきました。
攻略の可能性は?今後の注目ポイント
攻略の兆しが見えても、実行できる者は少ない。それが現実です。
それでも、スキを突こうとする挑戦者たちは今後ますます増えるでしょう。
次戦は9月──アフマダリエフとの統一戦へ

WBA暫定王者ムロジョン・アフマダリエフとの防衛戦が2025年9月に予定されています。
元IBF・WBA統一王者であり、鋭い左ストレートと身体能力に優れた技巧派。井上の“ダウン後の立て直し力”が試される可能性が高い相手です。
結論:攻略は進む、だが「完全勝利の姿勢」は崩れない

たしかに井上尚弥は“完全無欠の王者”ではなくなったかもしれません。
だが、「攻略された」わけではなく、「攻略しようとした者がいた」だけのことです。
今回のカルデナス戦で見えたのは、脆さではなく、脆さをも上回る“修正力と圧倒的な対応力”でした。
まだしばらく、このモンスター時代は終わらないでしょう。
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