2025年、JRAの競馬学校から新人騎手が一人もデビューしない―。
1982年の開校以来、初めてとなる衝撃的なニュースが飛び込んできました。原因は、第42期生として入学した生徒全員が、厳しいルールや体重管理などをクリアできずに退学してしまったことによります。
未来のスター候補たちが、なぜ次々と学校を去ってしまうのか。この前代未聞の事態は、プロの騎手になるという道がいかに過酷であるかを物語っています。
実は、今やターフの主役として輝くトップジョッキーたちもまた、想像を絶するような厳しい学校生活を乗り越えてきました。
話題のワダイでは、競馬学校の厳しさを物語る、彼らの知られざる壮絶なエピソードをご紹介します。
川田将雅「死にたいと思うほど辛かった」孤高のジョッキーの原点

今やJRAを代表するトップジョッキーの一人である川田将雅騎手。その冷静沈着な騎乗スタイルから「孤高のジョッキー」とも称されますが、競馬学校時代は精神的に極限まで追い詰められていたといいます。
「死にたいと思うほど辛かった」
ある雑誌のインタビューで、彼は当時をそう振り返っています。元騎手であり、調教師でもあった厳格な父の存在。周囲からの期待。それらが、若き日の川田騎手に重くのしかかりました。
一度は心が折れかけ、悪い方へと考えが傾いてしまう日々。しかし、その苦難を乗り越えたからこそ、現在の圧倒的な強さと、何事にも動じない精神力が培われたのかもしれません。
彼の原点には、この壮絶な競馬学校時代があるのです。
武豊「とにかく先輩が怖かった」レジェンドが学んだ”我慢”

日本競馬界のレジェンド、武豊騎手でさえ、競馬学校の厳しさを経験しています。彼はインタビューで、競馬学校で最も役に立っていることを聞かれ、こう答えています。
「我慢することですかね(笑)」
冗談めかした口調の中にも、当時の厳しさが垣間見えます。武騎手は競馬学校の3期生。学校の指導体制もまだ手探りの状態で、特に上下関係は非常に厳しかったそうです。
「とにかく先輩たちは怖いし、生活も厳しいし」
そんな環境の中で、技術はもちろんのこと、人としての忍耐力を徹底的に叩き込まれました。レジェンドの礎は、この厳しい学校生活で築かれたと言っても過言ではありません。
福永祐一「ナメてた自分を叩き直された」

2023年に騎手を引退し、調教師へと転身した福永祐一元騎手。騎手時代は父・福永洋一元騎手と同じく「天才」と称されましたが、彼の騎手人生は順風満帆なだけではありませんでした。
中学3年生の時、競馬学校の入学試験に一度不合格になっています。
「骨折していても受かるだろうと高をくくっていたら、アッサリ落とされた」
この挫折が、彼の人生を大きく変えました。1年間高校に通い、自分を見つめ直して再受験。見事合格した際に、教官からこう言われたそうです。
「お前、最初に試験を受けたとき、ホンマにナメてただろ。2回目に受けにきたときは、態度がまるで変わっていたからな。1回目は受からなくてよかったよ」
一度の失敗が、彼の甘さを打ち砕き、人間的に大きく成長させました。この経験がなければ、その後の輝かしい騎手人生も、そして現在の調教師としての活躍もなかったかもしれません。
藤田菜七子騎手「もうダメかな」一度試験に落ちた過去

JRAで16年ぶりの女性騎手としてデビューし、競馬ブームを巻き起こした藤田菜七子騎手ですが、その道は決して平坦ではありませんでした。
実は、彼女は一度、競馬学校の入学試験に不合格になっています。
当時、「もうダメかな」と諦めかけたそうですが、その悔しさをバネに再挑戦し、見事合格を果たしました。また、学校ではもちろん男子生徒が大多数。
女性一人の環境で、注目を浴びながらの3年間の寮生活は、精神的に大変なことも多かったと語っています。
行き過ぎた厳しさの「影」- 訴訟に発展した過去

騎手の心身を鍛え、公正な競馬を守るための厳格な指導。それは競馬学校の根幹ですが、時にその厳しさは「影」の側面を見せます。
過去には、一部の生徒やその保護者が、指導法や退学処分を不服として、JRAを相手に訴訟を提起するという事態にまで発展したケースも報じられています。

何が「適切な指導」で、どこからが「行き過ぎた管理」なのか。心身ともに未熟な若者を預かる教育機関として、そのバランスは常に問われ続けています。
具体的な事件の詳細は様々ですが、夢破れた若者がいたという事実は、競馬学校が持つ厳しさのもう一つの側面と言えるでしょう。
まとめ:厳しい試練がトップジョッキーを創る

今回、競馬学校の卒業生がゼロになるというニュースは、改めてその世界の厳しさを浮き彫りにしました。
しかし、ご紹介したエピソードが示すように、その厳しい試練を乗り越えた者だけが、トップジョッキーとしてファンの前で輝くことができるのです。
次にターフで彼らの姿を見るとき、その背景にある物語に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
コメント