最近、ニュースやSNSで「日本人ファースト」という言葉を耳にする機会が増えていませんか?選挙のたびに話題になり、様々な議論を呼んでいます。
「なんだか難しそう」
「自分には関係ないかも」
と感じる方もいるかもしれません。しかし、この言葉の背景には、現代の日本社会が抱える経済や暮らしの問題が深く関わっています。
話題のワダイでは、「日本人ファースト」という言葉について、誰が、なぜ、何を主張しているのか、そしてなぜこれほどまでに議論が巻き起こるのかを、できるだけ客観的に解説していきます。
そもそも「日本人ファースト」ってどんな言葉?
由来はアメリカの「アメリカ・ファースト」

「日本人ファースト」という言葉の直接のルーツは、アメリカのドナルド・トランプ前大統領が掲げた「アメリカ・ファースト」というスローガンにあります。
これは、「何よりもアメリカ国民の利益を最優先する」という考え方で、保護主義的な貿易政策や、国際的な協調よりも自国の主権を重んじる姿勢を特徴としています 。
この力強いメッセージは世界中のナショナリスト的な運動に影響を与え 、日本でもこの考え方を取り入れた政治的な動きが登場しました。
日本での広がりと目的

日本では、はじめに「在日特権を許さない市民の会(在特会)」の元会長である桜井誠氏が結党した日本第一党が「ジャパンファースト(日本第一主義)」を明確に掲げました 。
その後、参政党が2022年や2025年の国政選挙で主要なスローガンとして用いたことで、より広く知られるようになりました 。
彼らが掲げる目的は、一言で言えば「日本人の暮らしを守ること」。グローバル化の波の中で、経済的に苦しんだり、社会の急激な変化に不安を感じたりしている日本国民の利益を最優先に考えるべきだ、と主張しています。
なぜ支持されるの?賛成派の主張と特徴
では、「日本人ファースト」を支持する人々は、具体的にどのような主張をしているのでしょうか。そして、どのような人々が共感しているのでしょう。
賛成派の主な主張

支持者の主張は、主に以下の4つのテーマに集約されます。
テーマ | 主張 |
---|---|
経済 | グローバル化や外国人労働者の受け入れによって、日本人の仕事が奪われ、賃金が上がらない状況が続いている |
社会福祉 | 外国人が生活保護などの社会保障制度で不当に優遇されており、その負担が税金を納める日本人に重くのしかかっている |
治安 | 移民が増えることで、日本の治安が悪化し、犯罪が増加するのではないか |
文化 | 行き過ぎた多文化主義や海外の価値観によって、日本の伝統的な家族観や文化が壊されようとしている |
これらの主張の根底には、「このままでは日本がダメになってしまう」という強い危機感や、「今の政治は日本人の方を向いていない」という不満があると言えます 。
支持する人々の特徴
「日本人ファースト」に共感するのは、主に次のような特徴を持つ人々だと分析されています。
✅️ 長引く経済停滞に不満や閉塞感を抱く人々
「失われた30年」とも呼ばれる経済の低迷期に、賃金が上がらず、将来への希望を見出しにくいと感じている層です 。特に、就職難の時代に社会に出た「就職氷河期世代」がその中核をなしていると指摘されています 。
✅️ 既存の政治やメディアに不信感を持つ人々
大手メディアや既存の政党が報じること、訴えることに強い不信感を抱いています 。
✅️ SNSを主な情報源とする人々
テレビや新聞よりも、YouTubeやX(旧Twitter)などのSNSから情報を得ることが多い層です。SNSは、既存メディアが取り上げないような情報を直接届けることができるため、支持を広げる強力なツールとなっています 。
なぜ批判されるの?反対派の主張と特徴
一方で、「日本人ファースト」に対しては、強い懸念や批判の声も上がっています。
反対派の主な主張

批判的な立場の人々は、主に以下の点を問題視しています。
テーマ | 主張 |
---|---|
差別・排外主義 | 『日本人』を優先するということは、裏を返せば外国人を二の次にするということ。これは特定の国籍や民族の人々を排除する排外主義であり、差別を助長する危険な考え方だ |
データに基づかない主張 | 『外国人は生活保護で優遇されている』『外国人が増えて犯罪が増えた』といった主張は、公的な統計データによって裏付けられていない。誤った情報や誇張された話がSNSで拡散されている |
社会の分断 | 『日本人 vs 外国人』という対立構造を作り出すだけでなく、賛成しない日本人をも批判の対象にしかねない。社会に深刻な分断を生み出す |
歴史の教訓 | 戦時中、政府の方針に異を唱える人々が『非国民』と呼ばれ、厳しく弾圧された歴史を想起させる。国民を選別するような考え方は、非常に危険だ |
反対する人々の立場
これらの批判は、主に以下のような立場の人々からなされています。
✅️ 人権や国際協調を重視する人々
✅️ データや事実に基づいた冷静な政策議論を求める人々
✅️ 人口減少社会において、外国人労働者がすでに社会の担い手となっている現実を直視すべきだと考える人々
客観的に見るとどうなの?それぞれの言い分

賛成派と反対派、両者の主張にはそれぞれ一理ある部分と、見過ごせない問題点があります。客観的な視点で整理してみましょう。
良い点・評価できる点(支持者の視点) | 良くない点・懸念される点(批判者の視点) |
これまで政治が十分に向き合ってこなかった国民の経済的な不満や、社会の変化に対する不安を可視化し、議論のテーブルに乗せた。 「自国民の生活を第一に考える」という主張自体は、国の基本的な役割であり、多くの人が共感しやすい理念 。 | 複雑な社会問題を「外国人のせい」という単純な敵を見つけることで解決しようとする「スケープゴート」の手法であり、根本的な問題解決から目をそらさせてしまう。 差別や偏見を助長し、社会の分断を深刻化させるリスクがある。また、国際社会からの孤立を招き、長期的には日本の国益を損なう可能性がある 。 |
世界的な流れと日本の今
実は、「日本人ファースト」のような動きは、日本だけで起きているわけではありません。
反グローバリズムという世界的潮流

アメリカの「アメリカ・ファースト」や、イギリスのEU離脱(ブレグジット)、ヨーロッパ各国での右派政党の台頭など、グローバル化の行き過ぎに反発し、自国の利益を優先しようとするナショナリズムの動きは、世界的な潮流となっています 。
これらの動きに共通するのは、経済のグローバル化によって利益を得たエリート層と、逆に職を失ったり、生活が苦しくなったりした「忘れられた人々」との間の溝です 。
日本社会に根付く「閉塞感」と「自己責任論」

日本の場合、この世界的な潮流に加え、独自の背景があります。
✅️ 社会の閉塞感
長引く経済停滞により、多くの人が「頑張っても報われない」「未来は今より良くならない」という閉塞感を抱えています 。
✅️ 自己責任論の蔓延
日本社会には「貧しいのは本人の努力が足りないからだ」といった「自己責任論」が根強く存在します 。この風潮が、社会構造の問題から目をそらさせ、うまくいかない原因を自分以外の誰か(スケープゴート)に求めてしまう心理的な土壌を作っている、という指摘があります。
こうした社会的な不満や不安が、SNSという増幅器を通じて一気に広がり、「日本人ファースト」への支持につながっていると考えられます 。
これからどうなる?今後の予測と私たちにできること
「日本人ファースト」をめぐる議論は、今後の日本社会のあり方を占う重要なテーマです。
予測される未来

- 政治の新たな対立軸
これまでの「保守 vs リベラル」といった対立軸に、「グローバル vs ナショナル」という新たな軸が加わり、政治の分断がさらに進む可能性があります。 - 社会への影響
少子高齢化と人口減少が深刻な日本にとって、外国人との共生は避けて通れない道です。もし排外的な空気が社会全体に広がれば、労働力不足がさらに深刻化したり、社会的な摩擦が増えたりする恐れがあります。
私たちに問われていること

この問題は、単なる政治スローガンではありません。私たちの暮らしや社会の未来に直結するテーマです。
大切なのは、感情的な言葉やSNS上の断片的な情報に流されることなく、冷静に事実を見つめることです。賛成する人の声の裏にある不安や不満に耳を傾ける一方で、反対する人の懸念や歴史の教訓にも学ぶ。そして、データや事実に基づいて、自分自身の頭で考えることが求められています。
「日本人ファースト」をめぐる議論は、私たち一人ひとりが「これからどんな社会で暮らしていきたいのか」を真剣に考えるきっかけを与えてくれているのかもしれません。
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