PDS株式会社こと、ダンテ – 日本のユーチューバー黎明期を語る上で、彼の名前を欠かすことはできないでしょう。
かつては日本のYouTubeのトップを走るヒカキンさんでさえ一目置く存在でした。しかし、彼のキャリアは順風満帆とは言えませんでした。
この記事では、YouTubeのパイオニアであるダンテさんの輝かしい過去から、キャリアが停滞した要因、そしてフィットネスに活路を見出した現在までを、登録者数の推移などのデータと共に深掘りしていきます。
異色の経歴を持つパイオニアの誕生

ダンテさん、本名ペイン・ダンテ・将之介さんは、イギリスと日本のハーフで、そのキャリアはYouTubeから始まったわけではありません。驚くべきことに、彼はかつてジャニーズ事務所に所属し、ジャニーズJr.として活動していた経歴を持っています。
プロのエンターテインメント業界で培われたパフォーマンス能力と、特技のバク転に代表される高い身体能力は、当時の他のクリエイターにはない大きな武器でした。
2011年にメインチャンネルを開設すると、奇想天外な企画で人気を博した「超肉体派YouTuber」として、まだ未開拓だった日本のYouTube市場で瞬く間に頭角を現します。
多くのユーチューバーが憧れた黄金期

2010年代中盤、ダンテさんはYouTube界の頂点にいました。2016年にはチャンネル登録者100万人を突破し、名実ともにトップクリエイターの仲間入りを果たします。
彼の動画は「奇想天外でインパクトのある」と評され、商品レビュー、実験、料理、オリジナルソング制作など、ジャンルにとらわれないバラエティ豊かな内容で人気を博しました。
2015年にはオリジナル楽曲「パン向上」がカラオケで配信されるなど、その影響力はYouTubeの枠を超えていました。
当時、ヒカキンさんやはじめしゃちょーさん、マスオといった、今では誰もが知るトップクリエイターたちと対等な立場でコラボを重ねており、彼がいかにシーンの中心人物であったかがうかがえます。
ヒカキンさんが過去に彼に憧れを抱いていたという事実は、当時のダンテさんの存在の大きさを物語っています。
黄金期を知るファンからは、

PDSさんの動画がきっかけでYouTubeを見るようになった

昔の体を張ったメチャクチャな企画が大好きだった
と、黎明期を懐かしむ声が今でも多く聞かれます。
没落の始まり:数字が示す停滞と兄弟間の確執
しかし、栄光の時代は長くは続きませんでした。2018年頃から、彼のチャンネルの成長は急激に鈍化します。
チャンネル登録者数の推移 比較表(更新版)
年/時点 | ダンテ(PDS株式会社) | ヒカキン(HikakinTV) | はじめしゃちょー |
2016年 | 100万人 | 300万人 | 300万人 |
2019年 | 156万人 | 700万人 | 800万人 |
2021年 | 162万人 | 1,000万人 | 1,000万人 |
2025年 | 187万人 | 1,900万人 | 1,600万人 |
2016年にはダンテさんとヒカキンさんは200万人くらいしか差はありませんでしたが、2025年現在は10倍以上の差となってしまっています。
YouTube市場全体が拡大する中で、この停滞は「没落」という印象を決定づけました。その背景には、複数の要因が複雑に絡み合っていました。
最大の要因として挙げられるのが、実兄であり同じくユーチューバーのPDRさんとの深刻な対立です。ダンテさんにDV疑惑が浮上した際、PDRさんが自身の動画でそれを揶揄したことをきっかけに関係が悪化。
お兄さんと長年仲違いしていたダンテさんですが、なんとつい最近仲直りの動画を出しました。よかったですね。
後にダンテさんは裁判で勝訴し潔白を証明したものの、最も近いはずの家族から発せられた疑惑は、彼のイメージに大きな傷を残しました。その後、ダンテさんが兄の自宅を訪れ警察沙汰になる事態にまで発展し、二人は絶縁状態となってしまいます。
この一連の騒動は彼のブランドイメージを著しく損ない、キャリアの停滞に拍車をかけました。この兄弟間のトラブルについては、心を痛めたファンも少なくなく、

見ていて辛かった

どちらも応援していたからこそ悲しい
と、騒動が彼のキャリアに落とした影を惜しむ意見も見られました。
現在のダンテ:フィットネスへの転身とヒカキンの思い

長期にわたる停滞期を経て、ダンテさんは新たな道を見出します。2021年冬頃からYouTubeショートに注力し始めると、登録者数は再び増加に転じ、現在は187万人にまで回復しています。
そして現在の彼の活動の中心は、原点回帰ともいえる「フィットネス」です。自身のInstagramアカウントでは主に筋肉について発信し、日々のトレーニングの様子や鍛え上げられた肉体を披露しています。
かつてのバラエティ路線から、専門性の高いフィットネスインフルエンサーへと、その姿を大きく変えたのです。
そんな彼のことを、日本のトップに立ち続けるヒカキンさんも気にかけています。最近の動画でダンテさんの話題に触れたり、過去には

(YouTuberを続けるのは)相当なプレッシャーがある
と彼のことを心配するような発言もしていました。
かつて同じ時代を駆け抜けた盟友として、特別な思いがあるのかもしれません。
現在のフィットネス路線への転身については、反応が分かれています。

ストイックな姿がかっこいい

努力が伝わってきて応援したくなる
と、新たな魅力を支持する声がある一方、

昔のバラエティ豊かな動画が恋しい
といった、古くからのファンならではの戸惑いの声も存在します。賛否両論ありながらも、彼のSNSや動画のコメント欄には

色々あったけど、ずっと応援しています

日本のYouTubeのパイオニアであることは変わらない
といった温かいメッセージも多く寄せられており、彼の存在が今なお多くの人にとって特別であることがうかがえます。
今後の見通し

ダンテさんの現在の姿は、単なる「没落」という言葉では片付けられません。彼は、ゴシップや炎上といったパーソナリティへの評価から離れ、「筋肉」という努力と結果が可視化されるフィールドに新たな活路を見出しました。
彼の物語は、変化の激しいデジタルメディアの世界で、一度成功を収めたクリエイターがいかにしてキャリアを継続させていくかという、一つの貴重なケーススタディと言えるでしょう。黎明期を支えたパイオニアの新たな挑戦から、今後も目が離せません。
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