「米軍、イランの地下核施設に対し新型バンカーバスター『GBU-57 MOP』を使用か」
先日、世界中に衝撃的なニュース速報が駆け巡りました。中東の緊張が一気に高まり、世界が固唾をのんで続報を見守っています 。
このニュースで何度も報じられた兵器、『バンカーバスター』
- 「一体どんな兵器なの?」
- 「なぜ地下深くの施設を破壊できるの?」
- 「その威力はどれくらいなんだろう?」
そんな疑問を持たれた方も多いのではないでしょうか。
この記事では、今まさに世界の注目を集めている兵器「バンカーバスター」について、誰にでも分かるように、その仕組みから威力、開発の歴史までを詳しく解説します。この兵器を知ることは、現代の世界情勢を理解する上で非常に重要です。
バンカーバスターとは?一言でいうと「地面に潜る爆弾」です

バンカーバスターは、正式には「地中貫通爆弾(ちちゅうかんつうばくだん)」と呼ばれます 。
一般的な爆弾は、地面や建物に着弾した瞬間に爆発し、その爆風で広い範囲を破壊します。これを例えるなら「壁を外からハンマーで叩き割る」イメージです 。
それに対してバンカーバスターは、全く逆の発想で作られています。
- 着弾してもすぐには爆発しない
- 自身の巨大な重量と運動エネルギーで、分厚いコンクリートや地面を深く突き進む
- 目標の地下施設内部、あるいは狙った深さで爆発する

つまり、「硬い壁を突き破り、内部の急所に直接薬を注入する鋼鉄の注射針」のような兵器なのです 。その目的は、地上の建物を破壊することではなく、地下深くに隠された敵の「聖域」を内側から完全に破壊することにあります 。
なぜ必要?バンカーバスター誕生の歴史

この特殊な爆弾のアイデアは、第二次世界大戦にまでさかのぼります 。当時、ドイツ軍のコンクリート製Uボート基地に頭を悩ませたイギリス軍が、地面を揺らして地下構造物を破壊する「地震爆弾」を開発したのが始まりでした 。
そして現代のバンカーバスターが注目されたのは、1991年の湾岸戦争です 。
当時、アメリカはイラクの地下深くに作られた司令部を破壊する有効な手段を持っていませんでした 。この緊急事態に対応するため、なんとわずか3週間足らずで開発されたのが、バンカーバスターの元祖「GBU-28」です 。
使われなくなったM110自走榴弾砲の強靭な砲身を再利用して作られたという逸話は、当時の切迫した状況を物語っています 。
この出来事は、より強固な防御(盾)と、それを打ち破る攻撃(矛)の終わりのない進化を象徴するものでした。
バンカーバスターの威力はどれくらい?代表モデルを比較
バンカーバスターの破壊力を知るために、代表的な2つのモデルを見てみましょう。
特徴 | ![]() GBU-28 (元祖モデル) | ![]() GBU-57 MOP (現役最強モデル) |
---|---|---|
総重量 | 約 2,268 kg | 約 13,600 kg |
炸薬量 | 約 286 kg | 約 2,423 kg |
誘導方式 | レーザー誘導、後にGPS/INS追加 | GPS/INS |
主な搭載機 | F-15E 戦闘爆撃機など | B-2 ステルス爆撃機 (専用) |
今回イランで使用されたとされるGBU-57 MOP(マッシブ・オードナンス・ペネトレーター)は、まさに桁外れのスペックです。
- 重さ:約13.6トン 。一般的な乗用車10台分以上の重さを持つ巨大な槍のような兵器です 。
- 炸薬量:約2.4トン 。GBU-28の約8.5倍もの高性能爆薬を搭載しています 。
GBU-57は単に大きいだけでなく、総重量に占める爆薬の割合が非常に高くなっています。これは、着弾の衝撃に耐える頑丈なボディを作る技術が飛躍的に進歩したことを意味しており、材料科学の進化が兵器の威力を大きく向上させた好例と言えるでしょう。
【驚異の貫通力】バンカーバスターはどれくらいの深さまで届く?
バンカーバスターの真骨頂は、その圧倒的な「深さ」への到達能力です。
貫通深度の目安

- GBU-57 MOP (現役最強モデル)
- 通常の土壌:最大60メートル 。なんと20階建てのビルに相当する深さです 。
- 鉄筋コンクリート:約18メートル 。
- GBU-28 (元祖モデル)
- 通常の土壌:30メートル以上 。
- 鉄筋コンクリート:約6メートル 。
ただし、これはあくまで目安です。実際の深さは、地面の硬さや岩盤の種類によって大きく変わります。そのため、バンカーバスターを効果的に使うには、目標の地質や構造といった非常に詳細な情報が不可欠であり、高度な諜報活動が成功の鍵を握るのです。
貫通のメカニズム(3つの秘密)

🚀強靭なボディ
着弾時のすさまじい衝撃に耐えるため、特殊な高性能鋼合金で作られています 。これがなければ、地面に当たる前に砕け散ってしまいます。
🚀巨大な運動エネルギー
高い空から落とされた爆弾は、重力でどんどん加速し、地表に達する頃には超音速になることもあります 。その巨大な質量とスピードが生み出すエネルギーを、鋭く尖った先端に集中させてコンクリートを突き破るのです 。
🚀賢いタイマー(遅延信管)
内蔵されたセンサーが、何層もの障害物を突き抜け、狙った空間や深さに到達したことを検知します 。そして、最高のタイミングで爆発の指令を出す「頭脳」の役割を果たします 。
どうやって使うの?ステルス爆撃機との最強タッグ
これほど特殊な兵器は、どの飛行機でも使えるわけではありません。
🛩GBU-57 MOP
この現役最強モデルを運用できるのは、現在、アメリカ空軍のB-2 ステルス戦略爆撃機だけです 。MOPが狙うような国家の最重要施設は、最新鋭の防空システムで厳重に守られています。そのため、レーダーに映りにくいB-2の「ステルス性能」が、敵に気づかれずに目標へ接近するために不可欠なのです。B-2とMOPの組み合わせは、まさに敵の中枢を叩くための「切り札」と言えます。

🛩GBU-28
こちらは戦闘爆撃機であるF-15Eなど、より多くの航空機に搭載できます。これにより、作戦に応じて柔軟な運用が可能となっています。

攻撃は、数千メートルの上空から爆弾を投下することから始まります。投下後はGPSなどで精密に誘導され、目標に対して数メートル以内という驚異的な精度で着弾します 。
なぜバンカーバスターは存在するの?その戦略的な意味

なぜこれほど強力な通常兵器が必要なのでしょうか?
最大の理由は、敵対する国に「安全な隠れ家(聖域)を与えない」ためです 。
イランや北朝鮮などの国は、国の指導部や核開発関連施設などを空爆から守るため、山の奥深くや地下に巨大な要塞を建設しています 。例えば、イランのフォルドゥ燃料濃縮施設は、地下80メートル以上の岩盤の中にあるとされ、通常の爆弾では手も足も出ません。

バンカーバスターは、こうした「地下要塞化」戦略を無力化し、「どこに隠れても無駄だ」という強力なメッセージを送るための兵器なのです。
その存在自体が「抑止力」として機能します。「使ったらこうなるぞ」と見せることで、相手に軍事行動や核開発をためらわせる効果が期待されるのです。
まとめ:使われないことに価値がある究極の兵器

今回は、イランへの攻撃で使用されたことで注目を集めるバンカーバスターの威力や貫通する深さ、そしてその戦略的な役割について解説しました。
- バンカーバスターは地下深くで爆発する特殊な爆弾
- 現役最強のGBU-57は、コンクリートを18m、土壌なら60mも貫通する
- B-2ステルス爆撃機と組み合わせて、敵の最重要施設を破壊する切り札
- その存在自体が、相手の行動を思いとどまらせる「抑止力」として機能する

今回、ついに実戦で使用された可能性が報じられたバンカーバスター。その使用は、相手国にとっては国家の根幹を揺るがす攻撃と受け取られ、大規模な報復と全面戦争へ発展する高いリスクを伴います 。
この一撃が今後の国際情勢にどのような影響を与えるのか、予断を許さない状況が続きます。
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