最近公表された最新データで、日本の年間出生数が68万6,061人となり、統計開始以来初めて70万人を割り込むという衝撃的な事態が明らかになりました 。これは、国の予測より約19年も早いペースで進む「静かなる国難」です 。
このままでは、私たちの年金制度や経済、地域社会が立ち行かなくなるかもしれません 。この記事では、なぜこのような事態になったのか、私たちの生活にどんな影響があるのか、そして未来のために何ができるのかを考えましょう。
なぜ、これほど急速に?少子化の5つの背景

少子化が急激に進む背景には、1つの原因ではなく、複数の要因が複雑に絡み合っているとおもわれます。ここに主な少子化の5つの背景をあげました。
経済的な不安

若い世代の所得が伸び悩み、非正規雇用の割合が増えています 。特に25歳〜34歳男性の非正規雇用者の割合は、1990年の3.2%から2022年には14.3%へと急増しました 。安定した収入の見通しが立たなければ、結婚や子育てに踏み出せないのは当然かもしれません。
高すぎる子育て・教育費用

子育てにかかる費用は増え続け、ある試算では子ども一人当たりの教育費が昔の約16倍になったとの指摘もあります 。塾や習い事、物価高も家計を圧迫し、「2人目の壁」の大きな原因となっています 。
子供を産んでも育てていける自信がないので産もうと思えないということでしょう。
仕事と育児の両立の難しさ

「子育ての負担が女性に偏っている」と7割近くが感じており、育児をしながらキャリアを続けるのが難しい社会です 。特に地方では女性の雇用が少なく、結婚や出産を機に仕事を辞めざるを得ない状況が、若者の都市流出と地方の過疎化を招いています 。
大手では男性の育休も普通にはなってきましたが、地方の中小企業まではまだまだ浸透していません。
結婚や家族に対する価値観の変化

「結婚しない自由」「子どもを持たない選択」など、個人の価値観は多様化しました 。SNSでは「独身は自由で楽しい」「育児は大変」といったイメージも広がりやすく、経済的な不安と相まって、結婚や出産を選ばない人が増えています 。
なかには結婚はリスクでしかないと発信するインフルエンサーもいて結婚・家族に対しての考え方が大きく変わってきているといえます。
進む未婚化・晩婚化

日本では婚外子(結婚せずに生まれる子ども)の割合が約2%と、欧米諸国に比べて極端に低いのが特徴です 。そのため、結婚する人が減る「未婚化」や、結婚する年齢が上がる「晩婚化」が、直接的に出生数の減少に繋がってしまうという、構造的な問題を抱えています 。
結婚せずに子供を産むということが日本の文化にまだなじんでおらず、結婚→出産という流れを重視する日本の価値観が影響しているのでしょう。
私たちの生活への具体的な影響
「少子化」は、遠い未来の話ではありません。すでに私たちの生活に忍び寄る、3つの具体的な影響を見ていきましょう。他人事ではありません、しっかりと見ましょう。
年金制度の危機

日本の年金は、現役世代が高齢者を支えるシステムとなっています。支える側が減り、支えられる側が増えれば、制度が揺らぐのは必然です。このままでは、将来もらえる年金が減らされたり、私たちが払う保険料がさらに引き上げられたりする可能性があります 。
日本経済の縮小と衰退

働く世代(生産年齢人口)が減れば、人手不足が深刻化し、企業の生産活動が停滞します 。国内のモノやサービスへの需要も減り、経済全体が縮小 。新しい技術やサービスを生み出す力も弱まり、日本の国際競争力が失われる恐れがあります 。
地方から消える暮らしのインフラ

特に地方では、人口減少の影響は深刻です。病院や公共交通、学校といった生活インフラの維持が困難になり、サービスの縮小や撤退が進む可能性があります 。すでに全国で空き家は849万戸に達し、「無医地区」も増加しています 。地域のコミュニティが崩壊し、防災や防犯面でのリスクも高まります 。
未来は変えられる。今こそ社会全体で行動を

出生数70万人割れは、日本社会全体で向き合うべき「深刻な国難」です 。政府も「2030年までがラストチャンス」と強い危機感を示していますが 、これまでの対策が十分な効果を上げてこなかったのも事実です 。
しかし、悲観してばかりではいられません。フランスのように、長期的な視点で一貫した政策を続けることで、少子化を克服した国もあります 。
私たちにできることは、経済的支援の強化(賃上げ、家賃補助など)、働き方改革(男性の育休取得促進など)、子育て支援の拡充(保育サービスの充実など)といった政策の実現を、選挙などを通じて力強く後押しすることです 。
そして何より、この問題を「自分ごと」として捉え、家族や友人と話し合い、社会全体で「子どもを持つことが、不安ではなく希望となる」空気を作っていくことが重要です 。未来を次世代に手渡すため、今こそ一人ひとりが行動を起こす時です。
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